凍【沢木耕太郎】山野井泰史・山野井妙子クライマーのヒマラヤ登山を描いたノンフィクション

ノンフィクション
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凍 著者:沢木耕太郎 のあらすじ

最強のクライマーとの呼び声も高い山野井泰史。世界的名声を得ながら、ストイックなほど厳しい登山を続けている彼が選んだのは、ヒマラヤの難峰ギャチュンカンだった。だが彼は、妻とともにその美しい氷壁に挑み始めたとき、二人を待ち受ける壮絶な闘いの結末を知るはずもなかった-。絶望的状況下、究極の選択。鮮かに浮かび上がる奇跡の登山行と人間の絆、ノンフィクションの極北。講談社ノンフィクション賞受賞。

作品紹介・あらすじより

深夜特急の沢木耕太郎が描く最強クライマー山野井泰史のノンフィクション

沢木耕太郎氏と言えば、旅好きな私は、よく氏の旅モノを読んできた。氏の「深夜特急」は旅好きなら誰でもご存知だと思う。そんな氏が書いたノンフィクションとも言えるご本人達(山野井夫妻)にインタビューを重ね書かれたこのドキュメンタリー小説は、内容が凄まじく、「人間の限界ってどこなんだろう?」と考えさせられた。題名の「凍」という漢字一文字の潔さと、この漢字がもたらしてくれるイメージとが完璧に重なった内容だと思う。文字通り凍える山の中で生死を彷徨い、信じられない精神力で下山したお二人の話である。

もう一度書くが、「人間の肉体的、精神的限界とはどこなんだろう?」と考えさせられ、また自分がいつも、「もうダメだ」と思うあの感情は嘘なんだ、あんな苦しさは限界の入り口にも立っていないのだと、自分の人生を振り返らされた。特に、精神面については、肉体が限界を超える遥かに前で精神の方が弱気になり、体にストップをかけているんだな、と思った。本中、肉体はとっくに限界を超えているように思うが、二人は精神面だけで下山したと言っていい状況のようだった。精神が(例えそれが、寒さで朦朧としていたとしても)精神の深いところに力があれば、人間の体はあとから付いてくるように感じた。

私自身は、幼い頃に、祖母と何度か山に登ったくらいで、登山の知識などほぼゼロに近いのだが、この本はそういう登山の「知識」がなくても、十分に惹きつけられる内容だった。結局、抽象的な概念「精神の強さ」というものがテーマにあるので、知識なしでも読めるのだろう。山のことを書いているが結局、人間という普遍的なテーマなので、誰にも響く本となっていると思う。

読了後、youtubeでお二人を拝見したが、この本にあるように、奥様の手の指はすべて凍傷でなくなっていた。

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