満州引き揚げ記録・夫の新田次郎が本の出版を決意
この本は、日本が戦争に負けて満州から北朝鮮そして日本へと逃げる1年と少しの間の壮絶な生活、逃避行について書かれてある、満州引揚げの記録です。
旧ソ連(ロシア)が侵攻する中、日々命の危険にさらされながら生活をし
決死の覚悟で日本へ帰りつくまでの壮絶な記録です。
著者の藤原てい氏は、「国家の品格」などの著書で知られる藤原正彦氏のお母様です。
私は、息子、正彦氏の本を読んでいる中で、藤原てい、というお母様のことや、「流れる星は生きている」の本のことを知りました。
正彦氏の本には、「母は、戦争が始まったなら、息子の左手を切り落とします。右手があれば生きていけます。」と言っていて、母がよほど戦争を憎んでいると改めて思ったことや、自分はガキ大将で色んなことをして遊んだが、川だけは怖くてなぜか、入ることができなかった。恐らく3歳の頃の記憶がそうさせているんだろう(※引揚げの途中川を徒士で渡って一家とも死にそうになっている)、というようなことが書かれてあった。
また、藤原てい氏の夫は、作家の新田次郎氏です。
てい氏が日本に帰国後、病床の中、「死ぬ前に満州で何があったのか残しておこう」と書き綴ったノートを読んだ新田次郎氏が、涙を流し、その後出版に至ったということで、もともと本にしようと思って書いたものではなかったというのです。(※新田次郎氏は、旧ソ連・シベリアへ連れて行かれていたため、夫婦は別々に異国の地から日本へ帰りついたのです。)
それを読んで、私は、強烈にこの本を読んでみたいという衝動にかられました。何故なら祖母も満州引揚者だったからです。私は祖母と高校生になるくらいまで一緒に暮らしましたが、祖母から直接満州引揚げ時のことは、聞いていませんでした。
満州国での日本人の生活
祖母が他界後、祖母が満州引揚げの時の記録を残していたことを知ったのは最近のことです。
チラシの裏に、鉛筆で昔の字で、その時の様子を書いています。
それを見た時、チラシも、消えてなくなるかもしれない、鉛筆の文字もかすれていってしまう。
これを、祖母の書いたこの記録を形に残さなければ、という思いが湧き上がりWEBサイトにまとめました。
祖母の手記には壮絶な、まさに命がけの引揚げの様子が書かれてありました。
ショックでした。祖母や祖父が日本に帰ってこれなかったら、今の私はこの世に存在していないわけですから。
そういうこともあって私は、藤原てい氏の本に惹かれたのです。
内容は、凄まじいものでした。
氏が帰国後数年は、医者も「神経衰弱」としか診断できず、はっきりした病名もなくほぼ寝たきりのような状態を続けていたのです。それは、この本を読めばわかります。文字通りの地獄を生き抜いて来たのです。
北朝鮮からの満州引き揚げの記録
私が少し疑問に思ったのが、祖母が書いていた内容よりも、酷い状況だったのはどうしてだろう、ということです。祖母は、何とか、内職の仕事もあったり、八路軍の兵隊さんに、子供のお菓子をもらったり、また長女が小学校へ入ったりと、厳しいながらにも、「生活」があったのです。
それで、よく読んで見ると、祖母は、中国の「新京」まで逃げて、そこで引揚船が出るまで生活していたのですが、藤原氏家族は、その「新京」から北朝鮮へ逃げて、北朝鮮で生活していたのです。
この差が、まさに生きるか死ぬかの確率を左右したのです。
後で調べると、やはり、北朝鮮で引揚船を待っていた人たちが一番酷い生活を強いられていたようです。物乞いをしなければならないくらいの悲惨なもので、更には、引揚船に乗るためには、38度線を超えなければならない。この38度線を超えるまでの逃避行が凄まじいです。
その内容はぜひ本書で、彼女の生の言葉で読んでいただきたいです。
こんなことが実際に遠い遠い昔ではなく、祖父母の時代にあったこと、そして今第三次世界大戦が始まろうとしている今こそ、戦争によって一般市民が受ける傷について知らなければならないと思います。
「流れる星は生きている」はこんな人に読んでほしい!
私がこの本をおすすめする理由は、戦争を知らない世代に、戦争とはどういうものか、というのを少しでも知ってほしいからです。今、ウクライナとロシアが殺し合いをしています。もしかしたら、まだまだ遠い国、自分には関係ないと思っている方も多いと思います。しかし、実際に、数世代前の日本人が、あなたのおじいちゃん、おばあちゃんが、地獄を見てきたのです。そして、そのおじいちゃんおばあちゃんが、いなければ、あなたは今、生まれていないのです。
毎日、つまらない生活ですか?
次から次とやってくる不安に押しつぶされそうですか?
さみしくてやりきれないですか?
なんのために生きているのか、その問いが頭を離れませんか?
何をやってもむなしさがついてまわりますか?
でも、あなたは今生きています。それは、あなた一人ではできないことなのです。
毎日に感謝して、、、などとは、とてもとても言える人間でない私ですが
もし、毎日に不満があるなら、今「生きている」ことに誇りを持ってほしいです。
立派に息、しています。生きています。それだけで素晴らしことなんだと、改めてこの本と祖母に気付かされ、大切な本となりました。
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